資本主義がなくなった世界を体験できるSF小説!
どうもどうもこんにちは。
今日の本は
『クソったれ資本主義が倒れたあとの、もう一つの世界』
ヤニス・バルファキス 著
江口泰子 訳
です!
どんな本か?
経済学部教授の著者が「もし資本主義じゃない世界があったとしたら?」を描いたSF小説です。
登場人物のひとりであるエンジニアのコスタは、私たちと同じ資本主義の世界に生きていて、バーチャルシミュレーションの機械を作っていました。
なんとその時に偶然、機械がパラレルワールドとつながる機能を持ったのです。
そしてパラレルワールドに住む、もう一人の自分コスティからメッセージが届き、コスタとコスティはそれぞれ自分の住む世界についての情報を交換するようになりました。
コスティが語るもう一つの世界では、資本主義がなくなっていたのです。
こんな感じで物語は進んでいきます。
私は経済について無知なので、こういうSF小説の形で書いてくれているおかげで、無理なく読むことができました。
また、著者が経済学者だけあって、資本主義がない世界について細かく考えられており、非常にわかりやすいです。
小説なのでフィクションではありますが、私たちの住む資本主義世界の経済的歴史も知ることができるので、経済に無知な人なら得るものがある本だと思います。
もちろん物語としても、魅力的な登場人物がいたり、ちょっとしたどんでん返しがあったりしておもしろいです!
どんな人におすすめか?
この本は
1.資本主義がない世界での働き方が気になる人 2.ベーシックインカムのある世界が気になる人 3.資本主義がなくなる過程が気になる人 |
におすすめです!
1.資本主義がない世界での働き方が気になる人
資本主義がない世界ってどんな世界なんだろう?
私は考えたこともない疑問です。
資本主義とは、自分の稼ぎを自分のものにでき、より稼ぐために他の人や企業と競争して、技術や生活がよくなっていくものです。
その反面、富を持っている者はより富を得て、貧しい者はより貧しくなっていき、貧富の差が大きくなっていってしまう性質があります。
私たちの大部分は、生まれた時から資本主義の中にいますから、それが当たり前なので、資本主義じゃない世界はなかなか想像ができないと思います。
資本主義じゃない世界は私たちの今の世界とどう違って、どういう働き方になっているのでしょう?
本書で描かれている資本主義じゃない世界でも、企業や会社はありますが、仕組みが違っています。
まず何よりも驚きなのが、上司がいないこと。
私たちの世界の会社では、普通社長や役員がいて、下にいる従業員の行動を指示するような上下関係になっているのですが、資本主義のない世界では、そういった上下関係がありません。
社長も部長もいません。
従業員全員が横並びの同じ位置にいる関係になっています。
従業員それぞれが、自分の望むチームに入り、自発的に動き、個人の責任で仕事をするようになっているのです。
そして上下関係がないので、上司に指図されることや、顔色をうかがう必要なく仕事ができ、上から下への伝達も必要ないので、仕事の効率がよくなります。
また、従業員全員が平等ということで、給料も全員同じになっています。
しかし、優秀な人やそうでない人など、仕事への貢献度は人によって違うので、同じ給料だと割に合わないと不満が出てくるでしょう。
なのでボーナスの額だけは、投票によって決めるシステムになっています。
この物語の中では、これでうまく回っているようです。
私はこの働き方がいいかどうかわからないのですが、もし可能なら一回こういう世界で働いてみたいなとは思います。
みなさんはどう思いますか?
本書には、資本主義のない世界の働き方がもっと詳細に説明されていますので、気になる人は読んでみてはいかがでしょう?
2.ベーシックインカムのある世界が気になる人
作中のもう一つの世界では、ベーシックインカムがあります。
ベーシックインカムとは、全国民に現金を支給する制度のことです。
近頃ではわりと聞く言葉ですが、ベーシックインカムの考え方がでてきたのは1970年ごろだとか。
作中では、毎月年齢に応じて一定の金額が口座に振り込まれます。
これによって、貧しい人や恵まれない人も、生活費や老後の心配をする必要がなくなり、将来のための教育が受けやすくなります。
また、よりよい生活をするために働くこともできるし、資本主義のある世界では食べていけないような職業、芸術や哲学などを追及するのも自由なのです。
もちろん、働かずダラダラ過ごすこともできます。
全市民が貧困から解放されるのです。
夢のような世界ですね。
しかも、国から市民の口座に振り込まれるお金はこれだけではありません。
新しく赤ん坊が生まれてきたときに、国から決められた額が振り込まれます。
これは、生まれてきた赤ん坊全員が同じ額になっています。
ある程度の年齢になるまでこのお金は引き落とせませんが、毎月のベーシックインカムも合わせ、引き落とせる年齢になるころには、相当な額が口座の中にあることになります。
これによって、生まれてくる誰もが、格差のない、平等な金額を手に入れることができるのです。
若いうちから、起業することもできるし、企業にお金を貸し付けて投資をすることもできる自由を、誰もが持っています。
これはいい世界ですね。
本書で描かれている世界では、全企業の総収入の5%が国に納められ、それをベーシックインカムの財源にしています。
働かなくてもお金が入ってくる世界が実現可能なら、そうなって欲しいなぁ。
そんな妄想をかき立てるのも悪くないかもしれません。
そんなベーシックインカムのある世界を、本書を通して体験してみてはいかがでしょうか?
3.資本主義がなくなる過程が気になる人
資本主義がない世界の状況だけでなく、どうやって資本主義がなくなったのか、についても本書では細かく描かれています。
もともと2008年まではもう一つの世界と私たちの世界は同じ歴史をたどっていました。
2008年は世界金融危機だったころです。
もう一つの世界ではそこから別の歴史をたどり、資本主義をなくすように動いていきます。
もう一つの世界では「ウォール街を凍結せよ運動」が発生し、だんだん「資本主義を凍結せよ(オシファイ・キャピタリズム。頭文字をとってOCと呼ばれる)」に変わっていきました。
OCはデモですが、広場や土地を選挙するわけではありません。資本主義を攻撃するには、特定の場所ではなく、金融取引と時間に作用させたほうがいいからです。
金融取引と時間に作用させるために、OC活動家たちが何をしたのかというと、ストライキです。それも短時間で大規模な。
具体的には、世界規模の大多数の家庭に水道料金の支払いを2か月間遅延させたのです。
それにより、水道料金の債権の一部を持つあらゆる金融企業に利益が入らなくなり、債券の価値も暴落して、金融市場が崩壊していきます。
ほかにも、悪徳企業の大株主になっている年金基金に、「悪徳企業の株を手放さないと月々の掛け金の支払いを保留する」と告げ、悪徳企業の株価を下げる運動など、市民のストライキによって資本主義が崩壊していきました。
もう一つの世界はこういう経緯をたどってきたのです。
市民がそこまで大変なことをしていないのが印象的です。
たしかに世界中の人がいっせいに水道料金の支払いを遅延したら結構大変なことになりそうな気がします。
小説の中の話なので、実際にこういうことが可能かどうかはわかりませんが、この経緯を考えついただけでもすごいですね。
本書にはさらに細かく資本主義がなくなっていく過程が描かれています!
気になる人は是非!
閃きを得る
いい本でした。
資本主義には金融企業や金融商品が深くかかわっていることも知れたし、資本主義がない世界でも、人々がちゃんと暮らせるのモデルがあることもわかったのでよかったです。
こういう世界があったらどんな生活になるだろう、と考えたりしても楽しい本だと思います。
資本主義を説明する時、よく例に出されるのがピラミッドという言葉です。
世界は階層化されていて、上に行くほどお金を持っているのですが、人数は少なくなっていることを表しています。
「資本主義を倒す」ことを絵にするなら、「ピラミッドを壊す」ことになるんじゃないか?と考えました。
壊す道具と言ったらハンマーです。
本書には活発な女性が登場するので、女性にハンマーを持たせましょう。
なんとなく、「資本主義を倒すためにこれから挑むぞ」というイメージが浮かんできました。
ということで描きました。
ズーン。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
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