閃き9『2030半導体の地政学』

半導体を制するものが世界を制す!

どうもどうもこんにちは。

今日の本は

『2030半導体の地政学』

太田泰彦 著

です!

どんな本か?

日本経済新聞編集委員の著者が、半導体を取り巻く国家間の関係について書いている本です。

様々な電気製品に使われている半導体が無ければ、現代の人の生活は成り立たちません。

半導体は国家の生命線であり、他国への攻撃にもなる、非常に価値のあるものです。

そして半導体の開発や製造に強い会社が世界各国にあり、会社のある国を重要なポイントとして、いかに立ち回っていくか。

それを地政学として考えるのが本書の特徴となっています。

本書を読めば、半導体を手に入れるための政治的な争いがどれだけ世界で起きているのか、半導体ビジネスの大まかな構造、日本が半導体ビジネスで生き残る道などがわかります!

どんな人におすすめか?

本書は

1.半導体の争奪戦について知りたい人
2.半導体ビジネスの構造を知りたい人
3.日本が半導体ビジネスで生き残る道を知りたい人

におすすめです!

1.半導体の争奪戦について知りたい人

上でも書きましたが、半導体は国家の生命線になる重要なものです。

半導体不足で車が製造中止になったニュースも過去ありましたし、パソコンや家電なども半導体がなければ作ることができません。

半導体の安定した供給を確保することが、国家を守ることにつながるため、世界各国で技術的、政治的な争いが起きています。

特に争いが過激なのが、アメリカと中国。

アメリカにはグーグルやアップル、中国にはアリババやテンセントなどのビッグデータを扱う企業があり、データを保存し利用していく上で半導体のサプライチェーン(供給網)を確保することは、今まで以上に意味を持つことになります。

争いの一つが、政府による半導体産業への補助金の額です。

国家の安全を守ることにつながる半導体産業で他国に遅れをとらないため、世界各国が自国の産業へ補助金を出していますが、その額がすごいです。

アメリカでは2021年に発表した半導体業界への補助金は500億ドル(約5兆5000億円)。

一産業に出す額としては、あまりに大きい財政支出です。

それに反応した中国は、対抗意識をむき出しにして補助金を増額し、合計10兆円以上を投じたとみられています。

もちろんこの二国だけでなく、世界各国が補助金を増額していますが、日本では数百億円程度の補助なのを見ると、けた違いに多いですね。

もう一つの争いが、半導体産業の要衝を押さえる陣取り合戦です。

地政学で自国が優位に立つためには、世界的に重要なポイントを押さえるのが重要だと言います。

半導体産業でも、重要な立ち位置にいる国がいくつかあります。

中でも、重要な国が台湾。

なぜなら台湾には、半導体を受託製造する世界最大手企業の台湾積体電路製造(TSMC)があるからです。

世界のどの企業でさえ、TSMCには技術でも規模でも勝つことができないほどで、アメリカも中国もTSMCの半導体製造能力に大きく頼っています。

特に中国では、半導体の開発や設計は国内でも高い技術を持っていますが、製造はほとんどTSMCに任せているため、依存性が高いです。

そこに目を付けたアメリカは、中国の半導体産業を押さえるため、策を講じます。

TSMCから中国への製品の輸出を防ぐように動いたのです。

2020年、国家安全保障を名目に、米国製の機器やソフトを使用して製造した半導体を中国のファーウェイに輸出することを、自国だけでなく外国企業にも禁じました。

もともと2019年からファーウェイに輸出を規制していましたが、今回はさらに台湾からの輸出も禁じてしまったのです。

TSMCは米国製の半導体製造装置やソフトを使用いていたため、この措置の適用範囲内でした。

また、アメリカは自国の中にTSMCの誘致も進めています。

アメリカも半導体の製造分野においては弱く、TMSCの工場を誘致することで、半導体サプライチェーンを自国内だけで完結させることができるからです。

TSMCもアメリカに工場を作ることを発表していますが、それが自ら望んでやっていることなのかは微妙なところだといいます。

このようにアメリカは強引ともいえるほどの策を講じて、半導体の重要なポイントを囲い込もうとしているのです。

狙い撃ちされている中国は、もちろんこれによってかなり苦しい状況に追い込まれ、両国の緊張は強まっています。

たとえ対立が深まったとしても、半導体産業の主導権を渡さないという強い意志がアメリカにはあるのです。

本書にはより詳しく半導体の争奪戦の様子が描かれているので、興味がある人は是非読んでみてください。

2.半導体ビジネスの構造が知りたい人

これほどまでに争奪戦が繰り広げられる半導体ですが、TSMC一社だけ押さえればいいかというとそうでもありません。

なぜなら、半導体と一口に言っても、出来上がるまでにいくつもの工程があり、その工程ごとに必要となる技術や設備が違うため、一社ですべてをまかなうのが非常に困難だからです。

半導体の製造工程をおおまかに分けると、設計・開発と製造の二種類になります。

文字通り、半導体の設計図を描く工程と、その設計図をもとに実際につくりあげる工程になりますが、それぞれ別の企業が担当していることが多いのです。

設計・開発を主とする企業をファブレス、製造を主とする企業をファウンドリーと呼び、両者はともに協力しあって半導体のビジネスをしています。

アメリカのアップルや、中国のファーウェイの子会社ハイシリコンはファブレスで、台湾のTSMCはファウンドリーです。

また、ファブレスでもファウンドリーでもない形態で半導体ビジネスに関わっているのが、IPベンダーと呼ばれる種類の企業です。

IPベンダーは、電子回路の基本パターンや設計のためのソフトを、ライセンスの形で他社の供与することで利益を得ています。

半導体の技術が上がるにつれて、どんどん回路が複雑になり、設計する側もライセンス供与がなければ追いつかなくなるために生まれたビジネスモデルです。

その他、半導体の製造をしていなくても、重要な役割を担っている企業があります。

それがオランダのASMLという企業です。

ASMLは、半導体製造に欠かせない機械である露光装置のメーカーです。

高度な露光装置をつくれるのは、世界でこのASML一社で、半導体ビジネスの中でもかなり重要な位置にいます。

半導体ビジネスは、実際の製造する企業だけでなく、製造に必要な機械やソフトを扱う企業もなくてはなりません。

それらの企業は世界各国に広く点在し、協力しあって半導体をつくっているのです。

3.日本が半導体ビジネスで生き残る道を知りたい人

アメリカも中国も台湾も半導体の製造に大きく関わっているし、オランダも重要な位置にいますが、では日本はどうなのでしょう?

残念ながら日本は、半導体産業で世界から相手にされていない状況です。

かつて日本は半導体の技術で、アメリカを上回っていましたが、時が進むにつれ衰退していき、台湾や韓国にも負けてしまいました。

現段階でも一歩も二歩も遅れをとっている日本ですが、これからまた半導体産業で重要な位置につくことができるのでしょうか?

答えはYES。

半導体の力関係は、新しい技術ができるごとに変わっていくからです。

日本が新しい技術をつくりだすことができれば、十分に可能性があるのです!

そのためには、今ある技術を進歩させるだけでなく、今までとは違う方向に進んでいく必要があります。

そして日本はその挑戦を始めているのです。

挑戦の一つが、「コンピュータによる半導体の自動設計」です。

これまでの半導体は安価な汎用チップが主流でしたが、これからは機械の用途に合わせてつくられている専用チップの需要が増えています。

しかし一種類の専用チップをつくるのに、一年以上の期間と40億円以上の費用がかかるといいます。

しかも企業ごとに違う種類必要となると、想像できないぐらい期間も費用もかかってしまいますね。

そこで「コンピュータによる半導体の自動設計」という考えがでてきます。

自動で設計図をつくることにより、人間がやるよりも早く、そして安価で半導体を製造できるようになるのです。

また自分たちの半導体製造コストが下がるだけでなく、自動設計ツールの知的財産を他国に供与するようになれば、日本の優位性が上がり、地政学における要衝となることができます。

まだ自動設計ツールは研究段階ですが、この画期的なアイデアを日本が実現させることができたらと考えると、希望が持てますね。

本書では他にも日本の半導体産業の動きが書かれています!

閃きを得る

いい本でした。

半導体という名は聞くけど、たいして意識もしていませんでしたが、まさか国家の生き残りに関わる重要なものだとは…

そして半導体をめぐって世界でここまで過激な争いが起こっているとは知りませんでした。

そういう自分の平和ボケした頭を正してくれたのがありがたいです。

さて、本書で印象に残ったのは、やはり国家間の争いです。

実際に手をあげるわけではないにしろ、政治的、経済的な攻撃をしている様がイメージとして沸いてきます。

半導体のビジネスで表面的には協力的に見える人も、実は言葉で攻撃しているんじゃないか?

などと妄想を膨らませていき、

「片手で握手し、もう一方の手に半導体を持ちながら、言葉の銃を突きつける人」

ということで描きました。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

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